私と猫二匹と旦那

その時の趣味と時々シャウト。

銭、猫、20歳。

ウチの実家の猫は銭という。私が命名した。貰ってきて嬉しいものと言ったら銭だろう。金じゃないだけひねっているのだ。キジトラの濃い奴、ゆずと同じ色味である。ゆずを知らない人は猫マンガを読まない人であろう。
その頃飼っていたもう一匹の猫はミミといった。母が命名した。母の実家の犬がミミだから、というよくわからない理由である。
私は飼う鳥すべてに「ピーコ」と名前をつけていたが、「動物のお医者さん」の二階堂にとって全てがチョビであるように、母にとってもミミなのであろう。


ミミは体が弱くほとんど外にも出ない甘ったれの先住猫だったが、銭はそれなりに波瀾万丈の生を送っている。
最初は犬のコロが育てていたのだが、そのかわいい風景が評判になり、誘拐されてしまった。
犯人は多分子どもだったんだろう。コロがさみしがっていたら5日で戻ってきたが、妙に食い意地の張った性格になっていた。


竹輪のためなら芸をも繰り出す。
お手、おかわり、お座り、ふせ、待て、取ってこいなんか当たり前。
「ダーン」と指で拳銃を撃つマネをするとぱたっと倒れて、教えたら眼もつぶるようになった。「よし」というまでちゃんと死んでいる。
図に乗った母がトイレを人用のでするように教えようとしたが、これは意味がわからなかったらしく断念。


もちろん盗む。
我が家の食卓の魚を盗むのはいい(いやよくない)が、隣近所の夕飯の鮭とかもやるので困った。
優秀なハンターで隣三軒両隣以上鼠がいなくなった。


どちらかというと悪名の高かった我が家の銭だが、最近よく近所からお声がかかるという。
「銭ちゃん、最近来ないけどどうしたの?」と。


どうやら複数の人の家に勝手に上がりこんで寝ていたらしい。
あるお家では猫アレルギーの娘さんのベッドが定位置で、決まった時間に必ず昼寝に行っていたそうだ。「それは申し訳ない」と答えると、「いえアレルギーだけど猫は好きなので」って、ああもう本当にありがとうございますご近所さん。
(私は自分の猫は室内飼いにしているがこれは時代のせいで、銭が拾われてきた頃は猫は家を出入りするのが一般的だった)


何度か死線を潜り抜け今年20歳。
さすがに外に出られなくなっているという。
どんなに調子が悪くても縄張りを点検に行った優秀で喧嘩の強い銭。よわむち傷なんて無かった。向こう傷はときどき貰ってたけど。


今、自分ちの桃(体重4kg、でかい)が、何もせずほよほよと生きているのを見て、多頭飼いにしようと思った。
こいつに猫の友人を作ってやりたいと。
できれば銭みたいにワイルドな奴。
じゃなかったらミミのように美しい奴。


今はちょっとタイミングが悪いので、もう少ししたら。
甘ったれ先住の桃が怒り狂うのもちょっと楽しみである。